
12月3日の土曜日、東京工業大学で開催されたMake Tokyo Meeting 07に研究室の4年生が出展しました。学生室を共有している小池研究室の学生と並びで。Gershenfeld(2007)によって『ものづくり革命』が著されてから、「個人の、個人による、個人のためのものづくり」に根差した「パーソナルファブリケーション」の活動が盛んになってきています。

この、ものづくりの祭典であるMakeにはエコノミスト誌も着目しており、Makeのブログにも、以下のような引用が掲載されています。
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Makerムーブメントは、デジタルカルチャーに対する反応であり、副産物でもある。いくつもの流れが収斂して実現した。新しいツールや電子部品の登場で、物理的世界とデジタルの世界を簡単に安価に融合させられるようになった。インターネット上のサービスやデザイン用ソフトウェアを使うことで、開発や設計図の公開も簡単にできるようになった。毎日、コンピュータの画面で「ビット」と向き合ってきた人たちは、物理的な物を作る喜びに目覚め、異なる分野の愛好家たちと、現実の世界で、直接触れあうようになっている。今はまだホビイストの領域に止まっているが、Makerムーブメントの衝撃は、ずっと遠くにまで響くことになるだろう。
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http://jp.makezine.com/blog/2011/12/makers-make-the-economist.html
Makeという場は、非常に興味深い。展示しているブースの数は、激しくおおよそで200組くらい(チェックしていませんので、おおよそです)。どのブースも技術力が高いのに、「新奇性」や「学術的意義」のような観点を度外視した作品ばかり。消費の対象としてのモノをつくろうとるすのではなく、「つくること自体を消費している」ように見えました。そして、制作物の意味や有益性を問うこと自体ナンセンスなことのように感じました。この「つくる消費」、そしてそれを織り成す野生のプロシューマー(生産消費者)集団は無限に魅力的。その意味でMakeという場は、非常に興味深い場だと思います。

Makeの後、Makeに出展した研究室のMakersとともに、Makeに出展していた方々にインタビューを重ねています。例えば、ヒューマンインタフェース学会やらバーチャルリアリティ学会などでも「きちんと」発表しているある大学生Makerは、そんな「まっとうな活動」の「ストレス解消」のためにMake向けの電子工作をしていると述べていて印象的でした。学会は学会できっちり研究発表(学術的な活動を心底尊重しながら)、そのかたわら、学会発表のネタにはならない「表現」をMakeで発散。また、自分で積極的なものづくりには手を染めないけれども、クリエイターとして活躍していけるような風潮へのアンチテーゼとして、自分たちは「ものづくりはやめない」とも述べています。Makeという場は、いくつかの「まっとうな」カルチャーとの相互的な関係で構成されているように感じ取れます。
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そんなことをやんわりと考えていながら、12月17日の土曜日に、東京都市大学の上野直樹先生と、筑波大学の茂呂雄二先生主催の「第2回野火的活動研究会」に参加しました。野火的活動(wildfire activity)という言葉は、『ノットワーキング』(山住勝広・ユーリアエンゲストローム著)には以下のように記されています。
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...それは、「アメーバ状(amoeba-like)」や「野火(wildfire)」と表現できるような、集合的活動における拡張的学習である。スケートボーディングやバードウォッチングは、ある場所から消えたかと思えば急に別の場所で出現し活発に成長していったり、同じ場所でも一定の潜伏期間の後、出現・成長していったり、というように、独自な能力を持っている。さらには、...ひとつは、それらがレジャーと仕事とスポーツとアートを独自に融合したものであることであり、もうひとつは、それらが広大な起業の機会を提供しながらも決して商業的な動機には支配されず、完全な商業主義を絶えず拒み続けてきたことである。
いずれにしても、エンゲストロームが「アメーバ状」や「野火」と表現しているような拡張的学習の新たな形態は、...学び、遊び、交流、仕事といった活動がハイブリッドに融合し、活動の対象がオーバーラップしていく中で、学習が網の目状につながっていくこと。すなわち、越境する拡張的学習が、そこに生起してくるのである。(p. 37-38)
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野火的活動研究会には、校務の関係で後半1時間半のみの参加となったが、Makeという場を考えていく上で非常に有意義な観点を得ることができました。
まず、Makeという場を考える上で、(1)「ハードウエアのオープンソース化」(Arduinoやブレッドボードのような[誰でも電子工作に着手できる]ハードウエア)と、それを取り巻くソフトウエアやWebでの情報)は重要な観点になります。上野先生によれば、「ハードウエアのオープンソース化」は、メディアラボ所長の伊藤穣一さんも語っています。
https://plus.google.com/u/0/115020053723807024151/posts/ZeoA8cWWJwg
「ハードウエアのオープンソース化」は、TK-80の話にも通じるのかもしれない...。
それと、(2)昔からギークやオタクにみられる「ソーシャルなコミュニケーション」。ものづくり文化を見ていくうえで、野火的活動研究会で教えてもらった以下の2点が面白そう。
a)ピアプロダクション
ものづくりにおいては、共同でものを創るという「新しいネットワーク」のありかたが「当たり前」になっている、またはユーザ(でありプロデューサーが)意図的にそういったピアプロダクションのネットワークを創っていることがユニーク。
b)オブジェクトセンタードソーシャリティ
オブジェクト=ものを中心とした社会的なつながり=ソーシャリティという文化的土壌が、エンゲストロームの言う「野火(wildfire)」的に「好きな者どうし」をつなげてます。またそれは勿論、arduino/ブレッドボードの登場も大きい。
上記のことがらによって、「作ることから疎外されている状態」から解放されているという論点も研究会の中ではでてきました。ハードに限らず、ソフトウエアも相当解放されているから、誰でもやろうと思えばものづくりができる状態になっています。
今後は、こういったハードウエア/ソフトウエアのオープンソース化について、どういうふうに歴史的に生じてきたのか、Makeコミュニティのメンバーにインタビュー調査を継続してみたいと思いました。大学院に進学する学生さんたちとともに。モノと人と場の「ソーシャリティ」がくわわったことによる、ものづくり文化の再編、「パーソナルファブリケーション」の歴史と文化的特徴の論考ができればと思います。
