認知科学会にて、9月12日16:30-18:00の日程で、「知覚の文化的デザイン」というワークショップを開催します。
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企画内容の概要は、下記の通りです。
「知覚」という概念の前提には知覚対象の実在がある。つまり知覚ということばを使ったときから、知覚される外界や自己の状態が、知覚そのものの働きとは独立に実在することとなる。このように「知覚」が安定して本物のようだ、と思えるメカニズムを、【エスノメソドロジー】、【アフォーダンスの理論】の各領域を代表する話題提供者から報告頂き、わたしたちの「安定した知覚」の文化的なデザインについて議論したい。
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明治学院大学の西阪仰先生と、早稲田大学の三嶋博之先生に話題提供をお引き受けいただいた。両先生の発表概要は以下の通り。
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胎児を見る―道具を介した視覚の達成
西阪仰(明治学院大学社会学部)
概要:
この報告では,産科医療における医療専門家と妊婦との相互行為を扱う.とくに,日本の妊婦健診では超音波診断装置が,非常に多く用いられる.超音波診断装置は,妊婦の体内を可視化する装置であるが,超音波モニター画面の上に胎児の身体部位が見えるという事実が,どのようなプラクティス(やり方)を通して達成されているのかを,明らかにしていきたい.同時に,超音波モニター上に胎児の身体部位を見るということは,そこで行なわれている特定の行為,すなわち,胎児および子宮の発達の正常さを妊婦に実際に示すという行為に埋め込まれている.だから,胎児を見ることは,この「実際に示す」という行為の組織の一部として達成される.
報告者は,実際に,数十の妊婦健診をビデオに収録してきた.その収録された医療専門家と妊婦の相互行為のいくつかを書き起こし,おもに会話分析の視点より詳細に分析した.本報告では,その分析を実際に相互行為断片に即して具体的に示しながら,(1) 指差しと名指しによる,モニター上の陰影の構造化のプラクティスを記述するとともに,(2) その構造化が「識別連鎖」と呼ぶべき行為連鎖の開始部を構成することを示し,(3) さらに,この識別連鎖が拡張されて,「正常さを実際に示すこと」という行為が組織される手続きを記述する.これにより,視覚が行為の組織のなかに本質的に埋め込まれたものであることを,明らかにしたい.
以上から,(1) 行為の形成が,本質的に複合感覚的な達成であること,とりわけ発話および視覚とならび,触覚が行為の形成に重要な役割を果たすこと,このことが明らかになる.また,(2) 超音波診断装置の使用は,胎児の知覚のための重心を妊婦の身体的経験から専門家の視覚的解釈へと移動させた.一方,相互行為参加者たち(医療専門家と妊婦)自身が,超音波検査における視覚情報の限界に志向していることも,示してみたい.
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アフォーダンス知覚とその公共性
三嶋博之(早稲田大学人間科学学術院)
概要:James J. Gibson(1904-1979)の生態心理学では、人間や動物の個体による「アフォーダンス」の直接的な知覚が主張されると同時に、その公共性ないしは社会性----すなわち、個体間での知覚の共有----も主張される。「アフォーダンス」とは人間や動物によって知覚される意味ないしは価値であるとされるが、これらが「個体によって」独自に知覚され、かつ「個体を超えて」同様に知覚されるというアイディアはいかにして成立しうるのか。
本報告では、まず、「感覚から知覚へ」という「2階建て」構造を前提とする伝統理論と、Gibson生態心理学における、「感覚と知覚の平行した存立」を認める「2戸建て」構造とでも呼べる理論について比較しつつ、相互の相違を明らかにし整理する。この際、いわゆる「不変項」(invariants)概念の特徴と重要性について確認し、強調する。続いて、伝統理論の中では統合されるべきサブ・カテゴリーとされてきた、「同一個体内における他者」としての異質な感覚モダリティー間(視覚と聴覚、視覚と触覚等)での区別と重なりの問題について、当該領域における近年の研究動向を紹介し、意義づける。
Gibson生態心理学において、いわゆる五感としての各「感覚モダリティー」は、解剖学的な構造の差異という観点ではなく、区別された「注意のモード」という観点から機能的に分類される。一方、「他者」は観察点が自身とは異なっているという点で、やはりある種の(第5番目に続く)「注意のモード」として、一般的な「感覚モダリティー」と並列に考えられるかもしれない。もしそうであるならば、前者と後者の違い----同一個体内での出来事か、個体をまたがった出来事か----にのみ焦点をあてるのではなく、それらの共通性を探ることが知覚のデザインについて、文化に開かれたものとして考えるために有用かもしれない。以上について、参加者とともに考えていきたい。
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