きのう何食べた?

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いまさらながら、よしながふみの『きのう何食べた?』が面白い。『西洋骨董洋菓子店』や『大奥』で有名な著者だが、その中でも『きのう何食べた?』はかなりキテる。

ストーリーやマンガ特有の「間」のとり方や仕込まれたネタは勿論のことだが、43歳イケメン弁護士のゲイと、41歳のひげ美容師のゲイ、この二人の同棲物語という設定が秀逸すぎる。

社会学者(エスノメソドロジスト)ガーフィンケルの「アグネス」(男性から女性に性転換したアメリカ人の事例)では、「”本当は”男性であることを示さない事」がいかになされているかが示されている。『きのう何食べた?』はそのゲイカルチャー版だろう。「アグネス」の例を拡張すれば、ストーリー中の各所に「ゲイであることを隠す事、これをすることで逆説的に”ゲイである事をしている”こと」がうまくネタ的に織り込まれているように読める。

43歳イケメンゲイ弁護士を取り巻く環境も秀逸。例えばイケメン弁護士の母親は、「息子がゲイであってもそれを認めるべき」だという社会的な期待に過剰なまでにこたえようとして、かえって不自然なコミュニケーションに陥ってしまう。

うならされる記述(=発話)も随所にちりばめられている。

43歳イケメンゲイ弁護士:「ノンケの男の美貌なんてはかないもんよ。あいつらその美しさをキープしようって気が全然ないんだもんな〜」
41歳ゲイヒゲ美容師:「けどそういうノンケのゲイっぽくないところに叶わぬと知りつつ恋しちゃうのもゲイなんだよね〜」

この想像/リサーチ力に感嘆する。